私の手帖 from Tottori

ニュース、釣り、キャンプ、将棋、ギター、ビール。

出席番号7番がギターを買った日。

高校に通い始めて幾日も立たない頃。
出席番号7番の僕に、8番の男子がこう云うのだ。

「学校が終わったら、ギターを買いに行こう」

 

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photo by T.R.G.

 

音楽は割りと好きな方だった。小学生に入る少し前に、そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、両親は僕にピアノ教室へ通わせてくれた。けれど、教室は女子ばかりでどこか気恥ずかしく、僕のピアニストへの道は儚くも終わった。続けていれば神童と呼ばれたに違いないと今でも思っている。

 

そんな僕に8番は云うのだ。ギターを買いに行こうと。

 

高校生活が始まって特に熱くなれるものも無かったし、体育会系の部活動で汗を流して青春を謳歌するなんてタイプではなかったものだから、ただなんとなく(その時交わした会話なんて覚えていないくらいに)8番に誘われるがままに楽器店へ立ち寄ったのだ。

 

8番はギターを前にして興奮気味に話しかけてくる。深夜の洋楽番組で見たヘヴィーメタルバンドのライブ映像が鮮烈だったらしいのだ。いつかはその曲を弾きたいともいう。僕は洋楽といえば、家庭教師に勧められたマイケル・ジャクソンダイアナ・ロスを聞くくらいで、ジャカジャカと喧しいロックは耳馴染みのないものだった。

 

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ところがどういうわけか(本当にどんな動機だったのかさっぱり思い出せないのだけれど)その日の夕方には僕の部屋にギターがあった。アイバニーズ製の型番も知らない黒いソリッドのストラトキャスター、それにフェルナンデスのトランジスタアンプ。

 

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photo by freakinhippie

 

およそロックミュージックと呼べるようなCDさえない部屋にやって来た黒いギター。それは、夕日が差し込む部屋の片隅に、学習机の角の立てかけるようにひっそりと置かれた。

僕がドラマの主人公だったら、ここらで突如T・レックスの20thセンチュリーボーイなんかをドカンと弾いて、これから始まる青春ドラマの幕開けとなるのだろうけど、生憎現実というのは厳しいもので、チューニングもろくに出来ていないギターを弾いて不良品を買わされてしまったと後悔したのは良い思い出だ。

無論、翌日にはギターチューナーを買って帰ったのは言うまでもないけれど。